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■美容整形をしても問題は消えない？

しかし、そのような人は、顔が最初から整った人たちの仲間に入ったというわけでもない。どこかで、「あんたたちは苦労知らずでいいよね。こっちは本当に苦労してきたし、それでお金をかけたってのにさ」といった憎悪を持ち続けるだろう。

もしかすると、そんな苦労をする羽目になった原因として、産み育ててくれた親すらも怨むかもしれない。外見差別の風潮は、加害者側の反倫理的な言動を誘発するだけでなく、被害者側の心を歪め、他人への思いやりや配慮というものを消し去ってゆく危険性をはらんでいる。

あるいは、そんな風に人を憎まなくとも、整形した自分自身に負い目を感じ、心にとげが刺さったまま生きてゆくのかもしれない。日本人のなかには「自然のまま」「素のまま」をよしとする風潮もそれなりにある。美容形成手術などをした人やしていそうなほど整っている人に対して「あの人、顔をいじってるよね」と揶揄することも少なくない。


そうであるにもかかわらず、そうした手術を行う人が世間では増加傾向にあるわけだが、これはそうした偏見的風潮が克服・改善されたことを意味するものではない。というのも、実際に、そうした手術を行っていながらも秘密にしている人が多いし、秘密にしていなくともそれを指摘された場合に不快感をおぼえるからである。

美容形成手術が一般的に利用されながらも、それを堂々といえないようなこうした現状は、健全というよりはかなり歪んだ状況といえるのではないだろうか。

それに過剰なルッキズムは、一般的には称賛されがちな美人でさえも苦しめることがある。なにかあると「あの人、美人であることを鼻にかけてるよね」と揶揄されるし、そうした外見がジェンダーロール（性的役割）と結びつき、それが当人を苦しめることもある。